「あなた、行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ」
朝。今日も玄関先で夫を見送る。
彼にカバンを渡すと、いつもと同じように心配された。
「ホントに大丈夫か? 由里……」
「だから大丈夫だって……。もう、相変わらず心配性ねぇ……」
「だってほら、昨日もエッチしてないし……」
「毎日疲れて帰ってくるアナタに無理はさせられないでしょ? 淫虫が大人しくしてくれる、その日ぐらいは休んでもらわないと……」
「で、でも……」
「でも何?」
「本当に淫虫は騒いでないのか? そんなことあるのか? 淫虫にとって精子は栄養なんだろう? だったらやっぱり、毎日疼くものなんじゃないのか?」
最近頻繁に繰り返される質問だった。
それだけ心配されているのだ。
「だから大丈夫なんだって。本人が言ってるんだから信じてよ。淫虫だって、大人しくしたい時ぐらいあっていいんじゃない?」
「けど……お前、もしかして浮気とか……」
私は彼の唇に指を当てて、その先をさえぎる。
そして笑顔でクルっと一回転。
ひらひらの白いスカートを押さえて、彼の唇に軽くキス。
「もう、こんなに爽やかな人妻に向かってなんてことを。この私が浮気してるように見える? 他の男とヤラなきゃいけないほどムラムラしてるように見える?」
「いや、見えないけど……。で、でも……」
「あ、そうだ。淫虫症治っちゃったのかもよ?」
「馬鹿、そんな訳があるかっ」
「ふふふッ♪」
軽口を叩いて、もう一度聞く。
「今のこの私が、演技してるように見える? 無理しちゃってると思う?」
私の笑顔を前に、夫は少し考え直したようだった。
「いや、ごめん……。本当に、大丈夫みたいだな」
「だから、本当に大丈夫なんだってば」
「でも、そんなこともあるもんなのか……。淫虫が騒がないなんて……」
「ふふ、もう、何? アナタは毎晩私に中出ししないと心配で会社にも行けなくなるの? そんなんじゃ、淫虫とアナタ、どっちの方がスケベなんだか分からないわよ? うふふ」
鼻の頭を指で押さえて言うと、彼もようやく笑ってくれた。
今朝の不安はこれで払拭されたようだった。
「愛してるわ、アナタ」
「ああ、俺もだよ。愛してる。由里」
再び軽くキス。
「行ってらっしゃい」
「ああ、じゃあ何かあったら……」
「はいはい、電話でもメールでも何でもしますから。仕事に集中。ね?」
「おう」
いつもどおり彼が四階の廊下から消えるのを手を振って見送る。
そして私の、いつも通りの一日も始まった。
「んほおおおおおおおおおッ……! あおおおおおおおおおおおッ……!」
搾り出された数種類の体液が一部乾き始め、部屋には強烈な匂いが充満していく。
肉と肉がぶつかり合い、湿った肌がこすれる音も徐々に大きくなっていく。
私は今日も、隣にある六車さまの部屋に引きずり込まれているのだった。
彼の巣で、昼日中から官能の粘糸に肉体を絡めとられている。
「ほおら、由里……オマンコ気持ちよくなってきたよ……。さっき出した精子がネバネバになって、一段と気持ちのいいことになっちゃってるよ……んん? どうだい? 由里も中出し精子チンチンで塗り込まれて気持ちいいかい? ええ? どうなんだい……」
「……ぁあぁ……気持ちいいです……最高です……。六車さまの精子がぁ……中でネチョネチョ潰れてます……あぁあぁあぁあぁぁん……すんごおぉおおおぉぉぉ……」
六車さまの舌が口内を暴れまわり、私は彼の分厚い舌を咥えながら膣道にカリでザーメンを練り込まれていた。
すでに何発も射精されていて、赤く充血しきった柔肉。
そこに──精子が一匹、また一匹とすり潰されていく。
「あぁぁあぁぁぁぁああぁ……エロいぃぃぃ……六車さまのチンポおぉぉ……エロ過ぎてぇ、わらしいいいぃぃ……頭…おかしく……んふううぅぅぅ…なって……んはぁあぁぁ……」
「おかしくなっていいよ……。由里は僕の肉便器だからね。肉便器に頭なんていらないでしょう? 何も考えずに、このいやらしいカラダで僕の子種を受け取り続けてたらそれでいいんだよ……。分かった?」
「ああぁ、そ、そっぁあぁあぁ……んふううっ…い、いひいいいいぃぃぃ……わらしはぁ……六車しゃまのっほおおぉぉぉ……に、肉、肉、肉、肉ッ…便器いいいいいいぃぃぃぃぃ……! あああああああああああっ……!」
ビクンビクンビクン!
彼の部屋は「性欲の城」とでも呼ぶべきものだった。
なんせ、床一面がエロ本と「使用済み」ティッシュで埋め尽くされているのだから。
ろくに部屋から出ずにエロ同人誌を描いて生活しているらしい六車の部屋は、性の色と牡の匂いしかしなかった。
ベッドはなく、部屋の中央に布団が敷かれているだけ。
しかもその布団でさえ、何年も洗ったり干したりしていないのが一目で分かる不潔さなのだ。
汗やヨダレだけではなく、精液や尿も染み込んでいそうな汚れ方。本来真っ白だったはずの布団は、黄色を通り越して茶色に変色している。
匂いも凄く、見ているだけでも背筋に嫌な汗が伝うというのに……。
私は今、そんな布団の上で──汁だくになって彼と裸体を溶け合わせているのだ。
「んあああぁぁあぁあぁ……んスゴひいぃぃ……んぎもぢいいぃぃあああ……」
自分から彼の身体にしがみ付き、舌を伸ばして、腰を振る。
ズチュズチュズチュ……。
彼の肉と汁と匂いに溺れながら、ぶっとい肉棒が出入りする感触を楽しむ。
夫とでは味わえない、至極の時間。
私はこの時間のために、わざと夫との回数を減らしていたのだった。
淫虫にお腹をすかせて、六車さまにもっともっと私の反応を楽しんでもらえるように。
けれど、六車さまは、
「旦那にも中出しさせてあげなよ? じゃないと妊娠した時、自分の子じゃないって気付かれちゃうよ」
などと言う。
私は六車さまともっと興奮して、もっと気持ちよくなりたいのに。
けれど、私は彼の肉便器なのだ。彼の言うことに、口答えなんてできない。
「ふぁ、ふぁい……しますっ……夫とも……だから、妊娠させてっ……にんひん……んあああッ!」
「よおし、じゃあまた中出ししてあげるからね……。肉便器マンコを僕の特濃ザーメン漬けにして孕ませてあげるからね……」
「アンッ、好きッ、精子ッ、妊娠ッ、大好きッ、ンファアアッ! アハアッ! アハッ!」
ピストンが激しさを増す。
子宮口を突かれて、突かれて、突かれて、また突かれる。
臭い布団の上で身体をくねらせ、散乱したエロ本や「使用済み」ティッシュに囲まれて、また便器にされる。
びゅるびゅると排泄されたザーメンを、子宮奥深くにまで溜め込んでいく。まるで尿瓶のように。
「ふおおお、よおし、これから何度でも妊娠させてあげるからね……。ホントならティッシュに捨てるはずだった僕の排泄ザーメンで妊娠だなんて……。由里はもうダメだね……。ティッシュ以下だ……。まぁ、だから肉便器なんだけどね……ふふふ」
「あふぁ……あはぁ……んふうぅ……んふぅ……」
あまりのいやらしさに、絶頂が止まらない。
こんなに興奮した状態で妊娠したら、きっと生まれてくる子もド変態になる気がした。
けれどそれでもよかった。
ド変態でいられることの幸せを、私はもう骨の髄まで思い知らされていたから──。
[ 2011/11/29 16:03 ]
淫虫症の女 |
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