「せんせー! 妖怪カラダ洗いって知ってる?」
放課後。生徒と一緒に教室の掃除をしていた俺は、クラスで一番発育のいい柏木美里に声を掛けられた。
小五にして身長が150を越えている柏木。彼女はTシャツの下の爆乳をぶるんぶるんと揺らして、嬉しそうに飛び跳ねながら質問をしてくるのだ。
教師にあるまじき視線をそのカラダに送ってしまうのを何とか我慢し、俺は彼女の質問に答えた。
「妖怪カラダ洗い? ってあの都市伝説のか?」
それは、俺がまだ子供だった頃に流行っていた都市伝説の一つだった。
もう二十年も前になるか。
風呂場に突如として現れる「妖怪カラダ洗い」。
成人男性の姿をしたソレに身体を洗ってもらえれば、願い事が何でも一つ叶うのだという。
いま考えればバカバカしいにも程がある噂話ではあったが……当時はそれが、社会現象になるほど雑誌やテレビで話題にされたものだった。
「やっぱ先生も知ってるんだ? 有名だよね? 妖怪カラダ洗い! 妖怪カラダ洗いに身体を洗ってもらえば、何でも一つ願いが叶うんだって!」
お母さんがダイレクトにその世代なのだ。きっと家で話でも聞かされたのだろう。柏木はさも事実を語るかのごとく真剣さで、妖怪カラダ洗いについての話を自慢げに繰り返すのだった。
そんな柏木を、取り囲んだ男子たちが「嘘つき嘘つき!」と囃し立てている。
「……ああ、なるほど。妖怪カラダ洗いの話、コイツらには信じてもらえなかったって訳か」
俺が聞くと、柏木は箒にアゴを乗せながら頬を膨らませた。
「男子ってバカだから。信じてくれないの。ねぇ、先生からも言ってよ……。いるよね? 妖怪カラダ洗い。有名だよね? この話」
叶えたい願い事でもあるのだろうか。柏木は涙目になって俺の顔を見上げてくる。
うは、かわいい……。
将来は超ど級の美人になることが確約されている小学五年生は、すでに俺のハートを射抜く勢いだった。
生徒に見つめられてドギマギしているのがバレないよう、教師の威厳を漲らせて俺は言う。
「ああ、有名だぞ。まぁ先生も会ったことはないが……どっかにはいるだろうな。妖怪カラダ洗い」
ええー、うそだー! という男子たちの声。
その中で、教師という絶対的な味方を得た柏木は、アゴを上げて胸を張っている。
「へへん! いるもんね! 妖怪カラダ洗い!」
もちろんブラジャー着用の彼女。白いTシャツからはうっすらと青い下着の線が見えている。
噂ではすでにHカップのブラを海外から取り寄せているのだという。奇跡の巨乳だ。
が、男子たちはそんな彼女の爆乳にも興味を示さない。嘘だ嘘だと騒ぎ立てては教室中を駆け回っている。
俺はそんな男子生徒たちを眺めながら、しんみりと思うのだった。
お前ら、ホントにガキだな……。十年後には卒業アルバムで彼女の爆乳を食い入るように見つめながらオナニーするってのに……。
そして、俺は改めて自分が大人であることに感謝し、彼女の担任になれている現実に幸せを感じるのだった。
[ 2011/12/31 09:48 ]
妖怪カラダ洗い |
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