幸いにもその駅は、仁美の目的地だった。
彼女は痴漢男に背中を押されて、ホームへと降り立つ。“超密室”な満員電車の中とは違って、普通に人の目が届く場所。
仁美は思う。
今逃げ出せば、絶対に逃げ切れる。
彼は追いかけてこれない。だって、もしも腕を掴んで揉み合いにでもなれば、すぐに駅員が駆けつけてくるのだから。彼にしても危険は冒せないハズだ。
しかも病院は駅前にある。歩けば三分かからない距離。そこに辿り着きさえすれば、この忌々しい淫らな虫も取ってもらえるのだから。
すべての問題が、それで解決するのだ。
明日からはまた、昨日までと変わらない自分を取り戻すことができる。
何も問題はない。
問題は……ない、というのに……。
だというのに──仁美は痴漢男から離れることができずにいた。
頭では逃げ出したいと思っていても、身体が言うことを聞いてくれない。
その姿は、まるで磁石のようだった。
仁美が少しがんばって男から離れてみても、フラフラとした足はまた彼のそばへと吸い寄せられるように戻っていく。
何度やっても同じだった。強力な引力が発生しているかのように、仁美は男からどうしても距離を取ることができない。
結局仁美は、どこへ行くのかも分からないまま、痴漢男に寄り添い、彼に導かれるようにして隣を歩き続けるしかなかった。
頭の中では卑劣な痴漢男にも、情けない自分に対しても呪詛を吐いている。
が、身体はこれからの行為に期待を寄せてトロトロに蕩けてしまっていた。心臓はバクバクと高鳴り、口からは興奮の甘い息を吐き、いまだに愛液は足首まで垂れ流しの状態。
男は地下から出て、賑やかな駅前を避けるように裏道に入り、そしてまた少し歩いた。
仁美は生足に愛液を滴らせたまま、恥ずかしさにうつむきながら黙ってついていく。
どれぐらい歩いただろう、やがて男は立ち止まり、ここだと言って一軒のビルを指し示した。
仁美は顔を上げてその建物を見上げてみた。
ビルの中ほどの壁から、大きな看板が突き出ている。
いわく、「HOTEL愛の巣」。
「……ッ……」
ラブホテルだった。
仁美は顔を蒼白にさせて二、三歩後ずさった。
「……イ、イヤッ……」
ここまで来れば人目もない。痴漢男は仁美の手首を掴むと、強引に彼女を抱き寄せてしまった。
「……ああッ……」
男に触られた手首に、彼の身体に触れる肩に──言いようのない甘い感覚が走る。
仁美の身体は今、全身が性感帯になってしまっているのだ。抱きしめられただけで、上半身が気持ちいい。
足腰から一気に力が抜け、彼女は男の腕の中で淫猥に身悶えた。
「……くあふッ……や、やめてェッ……ああぅぅ……」
びしょ濡れになった生足をくねらせ、腰をぐるぐると回し、涙を流す。
「……あんッ……んああッ……」
抱きしめられているだけだというのに、イク寸前にまで高められてしまう自分の身体。子宮の奥をズンズンと小突かれているような感覚が、下半身全体を支配していた。
「……んふうッ……んふうぅぅ……」
男は仁美の上半身をさらに力強く抱きしめ、彼女の顔にクサい息を吐きかける。
「ククク。何がイヤなんだ? こんなにビショビショにお漏らしして……興奮しまくってるクセによぉ。へへ、分かるぜぇ……オマエは男が欲しいんだろ? 欲求不満にも限度ってもんがあるんだよなぁ? いいぜぇ、俺が思いっきり発散させてやるからよぉ……」
男はフラつき立っているのがやっとという仁美の肩を抱えて、ラブホテル──その自動ドアに近づいて行こうとする。
「や、やめ……イ、イヤだッ……だ、誰がッ、ア、アンタみたいな、犯罪者と……こ、こんなところッ……ん、んふくぅッ……」
あらん限りの力を振り絞って両足を踏ん張る。
簡単に連れ込めると思っている痴漢男の思い通りにはさせない。
仁美は絶対に中には入らないと、道の真ん中で抵抗した。
「おやおやおや……おかしな女だぜ。オマエ……こんなにデキ上がった身体して何言ってんだ? あれか? MはMでも、強気なMって奴か? 必死でイヤがりながらも犯されちまうってのに興奮するタイプか? そんならそうと言ってくれや。いいぜぇ、俺もそういうの大好きだからよぉ。いくらでも付き合ってやるぜぇ……ククク」
「な、何を……は、離せッ! 変態……痴漢ッ! 犯罪者ッ!」
「おうおうおう、酷いねぇ。酷い言われようだ。へへへ。でもまぁ、俺はいいんだぜ? オマエが中に入りたくないって言うなら、俺はそれでもなぁ。ええ? 分かるか? 俺は別に中に入らなくてもよぉ、変態の痴漢の犯罪者だからよぉ……今ココでオマエをめちゃくちゃに犯してやることもできるんだぜ……ククク」
そう言うと、男はスカートの中に手を入れてきた。
また強引にパンツをずり下ろされる。
太ももの中ほどにまでパンツをずらされ、スカートのすそも同じ場所までめくり上げられる。
テカテカに濡れた二十五歳OLのピチピチの美脚が、朝の柔らかい光の中でいやらしく色気を漂わせていた。
(……ちょ、何なのコイツ……いくらここが裏道で誰もいないからって……こんな道の真ん中で……くッ……)
男は仁美の溶けたバターに指を突き入れ、それを生み出している粘膜にまで触れてきた。
いきなり二本の太い指が、膣内、それも相当に深いところにまで侵入してくる。
「……ひッ……あひッ……!」
朝から何度も何度も絶頂に達し、ただでさえ敏感なソコはもはや「絶頂製造機」のようなことになっていた。
指で壁を押されるだけで、次から次へととめどなく快楽が湧き出し、全身に染み渡っていく。
結果、仁美は正常な思考と抵抗する力を一瞬で奪われてしまった。
「……んぐぅぅ……くはあッ……あ……あうあッ……」
痴漢は容赦なく、道の真ん中で淫靡な指責めを続けてくる。
仁美は空の下、人や車が行き交う表通りの喧騒を耳にしながら、膝をガクガクと揺らして身悶えた。
「ほらぁ……俺はオマエみたいなイイ女を食えるなら場所なんて気にしないぜ? 今ココで、このラブホテルの前でオマエを食らい尽くしてやってもいいんだぜぇ? へへへ」
「な、何を……くッ……くあああッ……!」
男は自分の言葉が決してハッタリなどではないと言うように、三本の指を前の穴に、そして二本の指を後ろの穴に突き入れてくる。
両穴ともすでにドロドロに溶け、充分にほぐされている。恥ずかしいほどすんなりと男の指を迎え入れてしまう。
「……んひぎぃぃッ……! ひぐうぅぅッ! ひぐうぅッ! ひぐッ! ひぐッ! ひぐッ! ひぐううぅッ……!」
ビクビクッ! ビクビクビクッ!
ラブホテルの歩行者用入口前。
いくら裏道で人通りは少ないといっても、こんな道のど真ん中で……。
仁美は激しく股間を指責めされて、無理矢理絶頂に突き上げられていた。
ヨダレがポタポタと落ちて、アスファルトの道路にシミを作っている。股間からは愛液が垂れ流しで、すでに足元は十分に濡れていた。
「ほら、ほら、ほら、ほら、いいのかぁ? 中に入りたくないんだったら、このままココで何度でもイカせてやるぜぇ? ククク、最後はスカートめくり上げて俺のチンポをぶち込むけどよぉ……いいのか? あ? こんなとこでズッポシ交尾しちゃってもよぉ……」
「……あぐああッ……! あんふぁぁッ……!」
今や男の指使いは限界まで激しくなっていた。ガシュガシュガシュと、一切の手加減もなく女の壷をかき混ぜてくる。
敏感な中の柔肉が無抵抗に押し込まれ、えぐられ、こすられ、引っかかれる。粘膜は男の指にされるがまま、グニグニと形を変えていく。
「……ふんぐッ! ふんぐッ! ふんぐッ! ふんぐううぅぅぅッ──!」
仁美はもうダメになっていた。
両足からはすべての力が抜け、軟体動物のように投げだされている。男に支えていてもらわなければ、道路にへたり込んでいただろう。顔面を涙とヨダレで汚し、はしたない表情をしては激しく腰を痙攣させる。
ガクガクガクガク──!
「……あふあッ……! あふあッ……! ひっ──ひぐぅッ! ひ、ひぐぅッ! ひ、ひぐううぅぅッ! んぐううぅぅッ──!」
ビクビクビクビクッ!
イッた後からまたすぐにイカされる。休む暇も与えてもらえない。
両穴の感覚はすでにレッドゾーンを突破してしまっている。もう何をされてもどれだけでもイケてしまう状態。
男の指に身体のすべてをコントロールされている。自分がどれだけがんばったところで、彼がイカせようと思えばそれで終わり。巨大すぎる快感を叩きつけられて、次の瞬間にはあっけなく白目を剥かされる。
(……くはぁ……た、たまんない……な、何これ……ヤ、ヤバすぎるぅぅ……)
本当にこのままでは、男が言うように……こんな道のど真ん中、しかもラブホテルの前なんていう最悪な場所で、最後までヤラれてしまうかもしれない──。
この男はやる。きっと、やると言えばやる男だ……。
「……くはあああぁぁ……はぁ……はあぁ……あうあぁ……」
もうほとんど、セックスしているのと変わらない自分の姿。
今のこの姿ですら、誰かに見られたら終わってしまうというのに……。
この先もっと凄いことをされてしまえば……自分は一体どんな醜態を晒してしまうことになるのか──。
仁美は残った頭で考える。必死になって考える。
その行為こそが、男の思う壷なのだとは気付くこともなく──。
そして──。
「……あふあッ……わ、分かった、分かったからッ……うはあッ……」
仁美はついに口にしてしまった。
「……は、入る……から……。だ、だから……お、お願いだから……こんなところでだけは……も、もう、ゆ、許して……お、お願い……」
男はそんな仁美の言葉を聞いて、ニヤリと壮絶な笑みを浮かべた。
彼女の頬にキスをしつつ、膣とアナルに入っていた指をズッポリと抜き出す。
ようやく責め苦から解放された仁美の、その豊満な肉体を抱き──彼はラブホテルの自動ドアをくぐり抜けた。
仁美は足をもつれさせながら、「HOTEL愛の巣」へと連れ込まれてしまう。
朝の八時過ぎ。学生たちは学校に向かい、サラリーマンたちは会社へと向かう。そんな慌しくも爽やかな時間帯。
ホテルは泊まりの客が出て行き、部屋がポツポツと空き始めたところだった。
[ 2011/11/29 03:05 ]
淫虫症の女 |
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