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東の森の食人植物 1-3

 多分夜なのだろう。外はもう真っ暗闇で、マンイーターの口の中にも一切の光はなかった。

 視界が黒く塗りつぶされると、嗅覚や聴覚、そして触覚がその働きを何倍にも高めてしまう。おかげで──、

 全く換気のされていない食人植物の口内に、嗅いだことのない強烈な腐敗臭が満ちているのがよく分かる。

 濡れて重なり合う千本の触手ペニスが、ニチャニチャと途切れることなく音を立てているのがよく分かる。

 その一本一本が私の裸体に隙間なく這い回り、ふやけた皮膚にまた媚液を塗り込んでいるのがよく分かる。


「……っ、うぅ、んひ……あおぉぉ……かはぁ……」


 まだ正気を保てているのが不思議なぐらいの状況だった。

 すでに乳首だけで数十回、皮膚に対する愛撫だけで数十回。合わせて百に迫る数の絶頂を強制させられていたのだ。

 股間の二穴がまだ何もされていない状態でこの有り様。もしもそこに、千本の触手ペニスたちが侵入してきたら……私は一体どうなってしまうのだろう。


「い……ひぃ……ひぐ……うぐ……あ」


 飽きることなく乳を吸い立てられ、また絶頂に押し上げられながらも恐怖した。が、もちろん相手は人間の思いなど少しも斟酌はしてくれない訳で──。


 ピト……。


「んおおおッ! あおおおッ!」


 股間の一番大事な部分──最も多量に蜜を滴らせていたアソコに、ついに触手ペニスの一本が接触してきた。

 体液と体液のあいだで、トロけ合うような粘膜接触が起きる。


「い、んひ、あひ……あおおおッ!」


 ビンビンに敏感になっているそこからは、わずかな接触であっても恐ろしい量の快感が湧き出してきた。

 そして、瞬間的に理解することができた。

 ──あれほど腹を空かせていた触手が、どうしてそこにだけは今にいたるまで責めの手を伸ばしてこなかったのか。

 おそらくは……焦らせば焦らすほどに、女はおいしい蜜を分泌させる──化け物は、進化の過程でそんなことを学んできたのだ。

 相手にとっても自分にとっても、ベストなタイミングで結合する。

 間違いなかった。

 だって本当に、今この瞬間こそが最もすばらしいタイミングだったのだから。

 女体が一番活発に性器を欲しがるひと時。これ以上早ければ性感の高まりが充分でなく、これ以上遅ければ体力が持たない──そのちょうど中間あたり。


(あああ……何てこと……)


 マンイーターが、ついに触手ペニスを女性器へと挿入させてくる。

 信じられないことに、後ろの穴にも──ペニスの先がその頭を押し付けているのだ。


「あああああ……うああああ……」


 まだ挿入はされていない。ネバついた亀頭でもって、穴の周囲をグリグリとこすられているだけ。前も後ろも──。

 けれど私は、その肉の圧迫感だけで、叫び声を上げてしまうほどの悦楽に思考を飲み込まれてしまっていたのだ。


「んあああ……! ああああッ……!」


 白目を剥き、ヨダレを垂らして腰を振る。

 汗と唾液と媚液と触手粘液に全身をドロドロにさせながら、私は激しい痙攣に腰をガクつかせていたのだ。


 果たしてその動きは……嫌悪と恐怖による、拒絶だったのか。

 それとも、興奮と期待による、求愛のダンスだったのか……。

 ──判断できる人間は、一人としてこの場にはいなかった。





 植物の中には、夜間その活動を弱めるものもあると聞いてはいたが……このマンイーターは違うようだった。

 もう日が暮れてから数時間は経っている。だというのに、触手の動きが一向に衰えないのだ。

 もしも昼夜を問わずに延々と嬲られ続けるのだとしたら──睡眠が取れるのも断続的に繰り返している失神の間だけ、ということになってしまう。

 ここに来て、また新しい絶望を突きつけられた感じだった。


 ところで今──私はぶっとい触手ペニスで前後の穴を凌辱されている。

 グズグズに崩れた周辺の肉を押し広げるようにして、二本の触手が気持ちのいい穴を出たり入ったりしているのだ。

 この二本で、今日何本目の触手になるか。

 私はさっきからずっと、尽きることのない数の触手ペニスたちに輪姦され続けていたのだ。

 あるものには膣内、直腸内に媚液を注ぎ込まれ──そしてまたあるものには愛液や大便を食らい尽くされていく。

 もちろんそれらの触手たちはすべてが、人間の男性にはできない淫猥さで私を喜ばせにかかる。複雑な動き、奥までのピストン、そして体液の交換……。

 もはや私は、自我を保てているだけでも奇跡──そんな状態にまで落とし込まれていたのだった。


「あはぁッ、イクッ、んひッ……! やだッ……またッ、イクッ、イクッ……あぐ、ひぐッ! ひぐうぅッ! ひぐうぅ! ひぐうううぅッ──!」


 媚液の効果に、長時間のピストンまで加わり──私の穴は、前も後ろも全部が柔らかくほぐされていた。

 周辺の肉が濡れ伸びて、みっちりと触手ペニスにまとわりついている。そして、そんな状態のままで、


 ズルル、ズルル! ズルル! ズルル!


 強烈なピストン運動を見舞われる。

 辺りにひときわ大きく響く肉音は、自分の膣と肛門から発生しているのだ。

 信じられない。信じられないが、これこそが現実なのである。

 その証拠に、鋭敏な肌は嫌というほどにペニスの感触を伝えてくる。

 肉の長さ、太さ、硬さ。接合部のヌメり、摩擦熱。そして、体内の柔肉を突きまくられることによって溢れ出す快楽──。

 いま身体中で感じているこれら全てが、夢や幻であるはずがないのだった。


(……私、ホントに……食べられちゃってる……)


 残った理性でぼんやりと考える。

 が、そう思っても少しも悲しくない。

 というかもう……悲しいだとか、恐いだとか、気持ち悪いだとか──そういうレベルは大昔に過ぎ去ってしまったのだ。

 涙は枯れることなく溢れ出す。が、顔の皮膚にまで食らいついてくる亀頭の群れに、零れ落ちる前に全てが吸われて消えていた。

 一本の呼吸用ペニスを咥えているせいで口の端からはヨダレが止まらず、そんな汁までを──十数本のペニスたちによって味わわれていく。

 耳や首の後ろにも、大量のペニス。そのうちの約半分が、常に媚液を吐き出し続けていて──。

 まさに地獄絵図。

 自分はその真っ只中で、ただひたすらに裸体をくねらせて溺れているしかないのだった。


「あおおおぉぉ……、んおおおぉぉ……」


 たまらなかった。

 たまらなく──気持ちがよかった。

 最初は吐き気を催していた匂いにも、ついに慣れ切ってしまった。

 イカされ続けているせいか……今では逆に、その匂いこそがすばらしいものであるという感覚に陥る。

 女体をこんなにも甘く痺れさせてくれる粘液なら、これぐらいの臭さは当然、というか、この臭さだからこそ私はこんなにもよがらされているのではないか。

 泣きながら、イキながら、そんなことまで考えてしまう。


「アッ……ハッ、き、気持ち……いい……ハッ……んひ……あひ、ぁ……」


 両手両足の十本の指に、十本のペニスが食いついている。それらは末端の神経へと、途切れることのない刺激を送り続けてくれる。

 乳首には今も大きな亀頭が吸い付いていて、母乳をゴクゴクと飲み込んでいる。伸ばされた乳房の横や下からも、たくさんの触手がその先っぽを押し付けてきていた。

 わきの下やわき腹、お腹や背中にも、大量の媚液をなすりつけられ──女の性感は際限なく高まり続けるのだった。


「んもぉ……い……イク……あく、い、イクッ……イグッ……んぐうううぅぅッ!」


 リズミカルに出たり入ったりする二本のペニス。今はその両方が「吐く」タイプの触手らしく、私の膣内、直腸内にはドクドクと射精にも似た奔流が注ぎ込まれていた。


「んぁ……あ、た、たまらなぃ……んひ……こ、こんなぁ……ああああ……で、出て……て、く……あ、く、い、イク……ッ! うううッ……!」


 私の絶頂を察したのか、触手たちはタイミングを合わせて一番深いところまでその頭を押し込めてきた。

 そして、そのままビュルビュルと濃厚汚汁を噴射。

 子宮にまで、腸にまでその粘液は流れ込んできた。


「──っふあぁあああ……! あへぇ、ああッ……! んふ、うううッ……! あおおおおおおッ──!」


 全身を痙攣させて、最大級の快感に耐える。目の前がチカチカして、腰は飛沫を撒き散らしながら前後にガクガクと揺れる。

 あらゆる場所の筋肉が、甘く溶けてなくなってしまう。

 唾液、涙、鼻水、汗、尿、愛液、腸液──全てをダダ漏れにさせて、ひたすら快楽に打ち震える。


「んぐうううッ! イグッ! イグッ! イグッ! イグうううううッ! いぐううううぅぅッ!」


 穴という穴を全開にして、産毛まで逆立てて絶頂感に悶え狂う。


「んほおおおおおッ……! あッ、がっ……もっ、ごんな……ッ! あがああああああああッ──!」


 それでも、千本の触手はこちらの事情などお構いなしに先端をこすりつけてくる。


「──あ……ひぎいいいいいいいッ……! あぎいいいいいいいいッ!」


 スゴイ。

 スゴイ。

 スゴイ。

 大量に精を吐き出して満足した二本の触手がズルッ! と音を立てて抜け、そしてまた代わりに新しいペニスが侵入してくる。


「んもおおおおおおおぉぉぉッ!」


 前後の穴の付近で、入れなかった数十本のペニスが行き場を失って暴れ狂っている。ドクドクと媚液を吐き出したり、太ももの肉に噛み付いたり──それぞれがやりたい放題に欲望をぶちまけている。

 めでたく女の穴に頭を埋められた新しい二本も、すぐさま競い合うようにして激しく肉を貪り始めた。前後の穴の間にある薄壁──元気すぎる触手たちは、その壁を通してお互いの頭と頭をぶつけ合っているのだ。


「──ッ! ──ッ! ──ッ! ──ッ!」


 気持ちよすぎて、殺されるかと思った。

 私は全身を激しく痙攣させて……まるで千一本目の触手になったかのように──自我を崩壊させて快楽を貪り尽くした。

 恥を捨て、常識を忘れ、理性を溶かし、ただ快楽によがり狂う一つの肉塊と化す。


「ああああああッ! いいいいいッ! これっ、ずご、ずご、ずごいいいいいいッ……! ぎもぢ……いいいいいッ! んがああああああああッ!」


 ネチョネチョ、ズルズル、ジュルジュル、ビュルビュル──。


 まさに消化されている、そんなイメージにぴったりの音、匂い、感触、そして気持ちのよさ。


「んぎいいいッ! イグッ! イグッ! ウグッ! アグッ! んぐうううぅぅぅッ──!」


 多分、遅かれ早かれ──自分はこの化け物に溶かされて、一つにさせられる。栄養として摂取されて、以降、自分という存在は食人植物の中で生き続けることになるのだ。

 けれどもう、全身に快楽という猛毒が回り、脳もやられてしまった今……その事実は幸福以外の何でもないように思われた。

 もっと溶かして……もっと食べて……もっとイカせて……もう、残らずあなたのモノにして……。

 マンイーターに愛情のような気持ちを抱きながら、全身から汁を噴き出させて大痙攣を起こし続ける。

 こんなにも激しい痙攣をずっと繰り返せば、心臓に負担がかかっていつかダメになる──。そんなことも、どうだってよかった。

 私はただ、女に生まれてきたことの悦びを全身に受け止めて──残りの人生を全て費やしても使い切れないほどの触手ペニスに囲まれる幸せに、ただただ魂を昇華させていたのだ。


「あふぁぁあぁあ……さ、さひこぉぉぉ……しょくしゅ……あふぁ……キモチイイ……んおああああ……」


 全身の筋肉が緩み切り、ヨダレはもちろん小尿や大便までもが垂れ流しになる。

 そしていよいよ、千本の触手たちが食前の準備運動から──本格的な食事へと移行したのだった。


 誰もいない夜の森で──一匹のマンイーターが、その腹に女の形を浮かべて踊り狂う。

 静寂の夜の森に、若い女の絶叫だけがいつまでも響き渡っていた。





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[ 2011/12/09 17:33 ] 東の森の食人植物 | TB(-) | CM(-)
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