あんな夢を見せられたせいか、私は異常なまでに興奮してしまっていた。
復讐すべき相手に監禁され、全裸で両手両足を縛られている。だというのに、喉奥からは悩ましい吐息を漏らしてカラダをくねらせているのだ。
これではまるで男を誘っている風にしか見えないだろう。部屋には私一人しかいないというのに。
汗ばんだ肌が、とてもいやらしくテカっている。
きっと周りには女の匂いを発散させてしまっているに違いない。
──ああ、もしも今ココが、電車の中だったなら……。
名前も知らない男の人がすぐにでも痴漢をしにきてくれていたのに。
汗ばんだ私のカラダを両手でたっぷりとなで回し、ビンビンに勃起したペニスを押し付けてきてくれていたのに。
──ああ、もしも今ココが、野球部の部室だったなら……。
練習終わりでユニフォームを泥だらけにした男たちが、汗の匂いを撒き散らしながら私のカラダに群がってくれていたのに。
何十人という部員全員に、徹底的に犯されることができたのに。
一人一人順番に。もちろん先輩から先で……。
きっとみんな、自分が一番感じさせてやるんだと、はりきって腰を打ちつけてきてくれていたに違いない。
(……ああ……もう……たまらない……)
性欲が止められない。いやらしい気持ちが止められない。
男にハメ回されているなんていう想像をするだけで、アソコの中が気持ちよくなる。
(ああ……好き……男好き……おチンチン大好き……ああ……男欲しい……抱かれたい……くっつきたい……男の肌が欲しい……おチンチンいっぱい欲しい……一つになりたい……ああ……男……好き……男……来て……来て……オトコ……)
私が舌を出して腰を振っていると、ガチャリと部屋のドアが開いた。
姿を見せたのは、この世で一番軽蔑する男だった。
当たり前のように全裸で、当たり前のようにペニスを勃起させている。
私は意志の力でいやらしい気分をどうにかこうにか抑えつける。頭のスイッチを切り替える。エロモードから戦闘モードへ。それが、このクスリの前にどこまで効果のあることかは分からなかったが。
「どや、元気にやっとるか。やっぱりチンポでバコバコハメ倒してもらわんことには、満足できんのと違うか。え? これが欲しいんやったら、いつでもおねだりしてエエんやで」
今にも張り裂けんばかりのギチギチに勃起したペニスを、押さえて、離す。
パチン!
怒張が勢いよく腹に当たって大きな音を立てた。
──ああ……。
男のペニスを視界に入れているだけで、心臓が早鐘を打つ。足がガクガクと震え、腰が抜けてしまったかのように脱力する。
(ああ、男が欲しい……。ペニスが欲しい……)
──でも。
(でも、ダメだ……。この男だけはダメだ……。この男にだけは絶対に……)
「……く……誰がおねだりなんかするもんか……。アンタは最低の人間だ。アンタだけは絶対に許さない……絶対に、殺してやる……絶対に……」
男は歯を食いしばって恨み言を吐く私に悠然と歩み寄り、腰に腕を回してくる。
「おお、怖い怖い。……でもなぁ、口ではそんなこと言うて、ホンマはワシのこと殺す気なんてあらへんのやろ?」
私のおなかをさすりながら言う。
「は──何を。アンタのやったことは絶対に許されることじゃない。どんなことがあっても、私がこの手で殺してやる」
男の手が徐々に下へ。薄い茂みをかき分けて蜜壷に到達。
「うーん、そうかあ? でも、ワシにはそうは思われへんのや。だって見てみい、お前のこの状態を。身体の芯からヘロヘロになってもうて、立っとるのもやっとやで。こんなんでどうやってワシを殺す言うんや?」
にちゃ……にちゃ……。
「──くっ、──それはっ──はぁっ──」
「例えばや、例えばの話。もしも今拘束を解いたとしてもや……こんな状態やったらまともに歩くこともできへんやろ。足腰ガクガクやねんから」
「──それはっ、──あんっ──そう、だけどっ、だけどっ──んんっ!」
「いやいや、責めてるわけやないで。わかっとんのや。このクスリ打ったら、誰でもそうなるてな……。性欲が溢れて、立ってられんようになる、それはしゃーないことや」
こんな風にな……とでも言うように、男は私のアソコを弄んでいた指を持ち上げ、開いてみせる。透明な粘液が糸を引いて伸びた。
「──くっ」
「……でもや、でもやで。そんな恐い目せんとってや、こっからが大事なことなんやから……。でもや、な、一回ちゃんとイって、満足しきったらや、次また興奮し始めるまではずいぶん落ち着くもんなんやけどな、このクスリは。お前もお姉ちゃんのことずっと見てきたんやったら分かってるはずや……。違うか?」
にちゃ……にちゃ……。
「──ああっ……」
男は耳元に口を当ててささやく。
「……つまりや、何が言いたいかと言えばやで……。な、お前がホンマに復讐のことだけを一番に考えてるんやったら、いつどういうチャンスが訪れるかわからんのやから、その時のために──ヘンなモヤモヤは消しとく思うんやけどな」
「……っ」
「具体的に言うたろか……。な、ホンマに殺す気があるんやったら、立ってられへんぐらい興奮した自分の身体をそのまま放っておくようなことはないと思うんやけどなあ……。ワシがお前の立場やったら、恥も外聞も捨てて──たとえ嫌いな男が相手であってもや──性欲を発散しとくけどなぁ……。大きな目的を果たすためになら、一時的に小さな屈辱ぐらい受け入れてもエエんちゃうか……なあ?」
「──そ、それはっ──」
「それか、やっぱり美由紀はお姉ちゃんのカタキなんてホンマはどうでもようて、ただワシに抱かれたくないだけやったんかぁ? ええ? どないやねん……ほら……ここ……どないやねん……」
ぐちゅ……ぐちゅ……。
「──ああんっ……くはあっ……」
……。
分かってる。こんなのは、単なる男の口車にすぎない。こんな話にのせられて、簡単に身体を許してはいけない。こいつはうまいこと言って、結局は私とヤリたいだけなんだ……。
……でも──。
男の言っていることは、百パーセント正しい。
確かにお姉ちゃんも、一人の男性とヤリ終えるとしばらくは落ち着いた。
そして今の私がこのままなら、いざというときに何もできないこともまったくその通りであるのだ。
──考えろ。よく考えろ。
目の前の男が憎すぎて、冷静に損得を判断できずにいた可能性はないか。目先のことばかり気にして、最終目標にいたる道筋を見失っていたことは?
そう、確かに。殺す相手だからと言って絶対に弱みを見せてはいけないということはない。逆に、弱みを見せて油断をさせておいた方が、殺すチャンスはより多くめぐってくるという話だってある……。
くちゅくちゅ……。
「……くふっ……あんっ」
……確かに、そういう考え方もできるかも。……でも……。
「ほら、美由紀……このままどこまでも性欲高めていくんか? いつまでも足腰ガクガクのヨダレだらだらで呆けててエエんか? ええ?」
「──くっ──はっ──あふんっ」
……そうだ。いつまでもこのままって訳にはいかない。
他の部分はどうでもいい。せめて、アソコの中の気が狂いそうなほどの痒さだけはどうにかして処理しないことには……。
「……くっ……ふあっ……」
男のペニスがふとももをえぐっている。
(──これなら、この棒なら……痒いところ全部掻いてもらえるのに……でも……)
私はそれから一時間ほども身体中の肉を揉まれて、しゃぶられて……そしてようやく、心を決めた。
[ 2012/01/08 11:36 ]
姉のカタキは女殺し |
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