十数分が経過して──。
「あぐあっ……! んぐあッ、もうダメッ! せんせっ! もうダメッ……!」
私は限界を迎えていた。
身体中がバラバラになってしまいそうなほどの快感。
私の小さな身体では、これ以上の快感を受け取ることができない。
だというのに、先生はなおも容赦なくペニスで膣をぐちゃぐちゃにかき回してくる。
きっと先生は私じゃないから、分からないのだ。
これ以上気持ちよくなれないというところまで来てしまっていることが。これ以上快感を与えられたら、頭の血管がぶち切れておかしくなってしまうということが。
だから、そういうことが分かっていないから──もう無理なのにいまだに全力で腰を叩き込んでくるのだ。
「せんせッ……せんせえェ! もうムリッ! もうムリだからあっ! んあああ! せんせえェッ……!」
私は必死になって彼の身体にしがみつき、泣きながら訴える。
が、先生はそんな私の叫びを聞いても、相変わらず冷静な表情のままで見下ろしてくるのだった。
「どうしましたか。そんなに辛いんですか。ですが……もう少しだけ我慢してくださいね。もう少しすれば、私も射精したくなると思います。ほら、いま止めてしまったら、せっかくここまで進めた治療行為が全部台無しになってしまいますから──」
「あんあっ! あんあっ! せんせェッ! おねがッ! おねがああッ……! もうムリあッ……! 止めて……ああッ……!」
「すみませんね奥さん。今やめるわけにはいかないんですよ。私も気持ちよくなってきましたから。ほら、もう少しであなたの不妊に効く濃い精子をたっぷり子宮に注ぎこんであげられますから。だからもう少しだけ我慢してください」
「んあっ! せんせッ! ダメェ、ダメなんですっ! わたしっ! もうああっ! イッ……イッっちゃっ! イッちゃいまっ! イっちゃいますっ……からッ! だからああッ……!」
私がそう叫んだ瞬間、それまで冷静だった先生の表情が一変した。
驚きと困惑を混ぜ合わせたような、ものすごい顔になったのだ。
そして彼は、私の肩を掴んで声を荒げる。
「ええっ? 奥さん、ダメですよ! イッたりしちゃいけませんよ! 奥さんは人妻なんですよね? 人妻が旦那さん以外の男のチンポでイってたらマズいじゃないですか!」
彼は口でそう言いながら、さらに激しく腰を打ちすえてくる。
「しかもこんな医療行為をされている最中にイクだなんて! そんなはしたないことがあってはいけませんよ!」
私は口から泡を吹きながら泣き叫ぶ。
「んああっ! だからッ……あああッ……! やめてっ! とめてっ! あぐあっ! イ、イっちゃいそう──だからああッ……!」
「いやいや奥さん、何をおっしゃってるんですか。今やめたら射精できないじゃないですか! 奥さんの子宮にたっぷり精子を注ぎ込むのが今日の目的だと言いませんでしたか? 止めるわけにはいきませんよ!」
パンパンパンパンパン!
「──んぐあアッ! んああアッ……!」
「奥さん、そんなに気持ちいいんですか? でもイっちゃダメですよ? 絶対にイクのだけは我慢してくださいよ? 旦那さんは今もあなたのためにがんばって仕事をしていらっしゃるのでしょう? 彼の知らないところで他の男のチンポでイってたら申し訳が立たないでしょう? 人妻失格ですよ?」
パンパンパンパンパン!
「んあっ! でもっんあっ! き、気持ちいいあふぁ……! 気持ちよすぎてっ……! イキ、イキそっ! イキそッ……! もうッ! ンンンゥッ……!」
全身の毛穴から汗を噴出して、涙と涎で顔をぐちゃぐちゃにして私は叫ぶ。
彼も汗を撒き散らして、こめかみに血管を浮かべながら、拷問のようなピストンを打ち込んでくる。
「ダメですよ奥さん! チンポでイカされるなんて、その男のモノになるということと同じでしょう? 旦那さん以外の男にチンポでイカされたら、もう旦那さんだけの女じゃなくなってしまいますよ! 旦那さんも悲しみますよ! 怒るかもしれませんね! いや、もしかしたら離婚ということもあるかもしれません!」
「あんあっ! そんなっ、でもあッ! 気持ちいいっ……! 気持ちいいからあッ……! もうムリッ! もうムリいいッ……! せ、せんせっ! せんせェッ……!」
パンパンパンパンパンパンパンパンパン!
「ほら、もっと激しく動かしますよ! 子宮の中まで亀頭をねじ込みますよ! ほら、奥さんのおまんこの中を全部チンポでグズグズにして差し上げますよ! ──でも、絶対にイっちゃ駄目ですよ? イったら旦那さんと離婚しなくちゃいけなくなりますよ? 離婚ですよ離婚!」
「んあああッ……! いやぁ……離婚いやああァ……いやなのに……気持ちッ、気持ちイイッ……! 気持ちイイッ……! ふぁッ!」
「まだイってませんか? 奥さん、我慢できてるじゃないですか! その調子ですよ奥さん! 私ももうすぐですから! もうすぐ精子をぶっ放して差し上げますからね! もう少しの辛抱ですよ! 絶対にイカないでくださいよ! うおおお! ほら! 私もチンポが気持ちいいですよ! ぐおおお! 出そうですよほら! 奥さん! 出そうですよ!」
「んぐあっ……あんがッ! せんせっ! イキっ、イキそッ! 早っ! 早くぅッ! イってええンッ……! ンふおおッ……!」
「ええ! もうすぐ出ますよ! 精子が出ますよ! 治療も終わりますからね! 我慢してくださいよ! おおお! 最後まで! 絶対に中出しして! びゅるびゅる精子出ても! イカないでくださいね! 旦那さんだけの女でいたいなら! くおおぉ! イカないでくださいよ! んぐおおッ……!」
「んぐあアアッ……! せんせえッ……! んあああッ……! ダ、ダメダメダメッ……! もうッ……! あうあッ……!」
「ほら、イキますよ! 精子でますよ! たくさん出ますよ! ほら! おら! おおおおお……!」
パンパンパンパンパンパンパンパンパン!
「あ、ふぁ……もうダメッ……! もう無理……! イクイクイク……! イ、イッちゃ──! もう無理もう無理ッ……! あああっ……! あああああッ……! もうムリもうムリもう──アアアアッ……! イグイグイグイグぅッ……! あああああッ……! んぐああああッ……! アアアアアッ……!」
ビクンビクン! ビクンビクン!
「奥さん! これ! イってるじゃないですか! 奥さん! そんな顔されると私も! おおお……ぐおおお! おおおおあああ!」
びゅるるるるるる! びゅるるるるるる!
「んっくああああああああああッ……!」
「うおおおおおおおおおおおおッ……!」
二匹の獣が、性器を繋ぎ合わせて咆哮する。
身体の上から下までを大量の汁で濡らし、それらを混ぜ合い、肌を溶け合わせながら絶頂に打ち震える。お互いの呼吸をひとつにし、全身の筋肉を痙攣させて、きつくきつく抱き合う。
まるで性的快楽の海で溺れているようなその姿──。
そして二人はその後もずっと身体を密着させ、絶頂の余韻に浸り続けるのだった。
「女性ホルモンを分泌させやすくするために、外から直接男性フェロモンを摂取するのもいいのですが……それ以外にも──奥さん自信が性的に興奮し、恥ずかしがり、時には屈辱さえ覚える……まぁ要は内側からの作用ですけれど……そういうことも必要になってきます。ですから奥さんには、これからもどんどんとエッチな行為をしてもらおうと思っています。そしてそれこそを、全体の治療方針にさせていただきたいと考えています」
「……」
「すべてはあなたの不妊を治して、愛する旦那さんとの間に子供をもうけてもらいたいがため、ですよ。素直に状況を受け入れて、そして積極的に協力してください。いいですね?」
いま思うと、あの頃の私は本当にバカだったと思う。
こんな奴に、こんなにも簡単に騙されてしまうだなんて……。
でも、当時の私は本当に不妊に悩んでいたのだ。
それこそ、ずっと妊娠できない身体なら……夫とは離婚して、彼にはもっと別の──ちゃんと妊娠できる女の人と再婚してもらった方がいいのではないか。
そう考えたりするほどに。
要は、藁にもすがる思いだったのだ。
だから、妊娠させてやるという先生に出会えたとき、私は光にも似た希望を感じてしまっていた。
この先生となら奇跡が起こせるのではないか──そう思った。
本当に……怪しい宗教にハマる主婦そのものだ。
が、どんなに無茶で無理な道でも、夫との子を授かるためなら突き進める。突き進んでやる──。
当時の私は、そういう考え方しかできなくなっていた。
そして、事態はますます悪化していく。