私は強く断ったのだ。
夫婦の寝室は、私たち二人にとって聖域のようなもの。
赤の他人が簡単に入っていい場所じゃない。
しかもあろうことか、そこで私を抱くだなんて……。
そんなこと──許せるわけがない。
いくら先生だからといって、ダメなものはダメなのだ。
結局、私の訴えは半分だけ聞き入れられ、私も先生の提案を半分だけ呑む形となった。
「分かりました。では、夫婦のベッドは汚さない。つまり、挿入はなしということで……フェラチオの続きだけそこでお願いするということでいいですか」
しかしそれだってしぶしぶという感じで、私は仕方なく先生と一緒に寝室に移動するのだった。
先生はリビングで服を脱ぎ捨てて、全裸で私の横についてきた。
改めて異常な状況だと思う。
夫以外の男性が、こんなにも我が物顔で家の中を歩き回っているなんて……。
ドアを開けて寝室に入ると、先生は当たり前のようにベッドに腰をかけた。
夫ではない全裸の男性が、私たちのベッドに座っている。
心の中にもやもやとした得体の知れない感情が湧きあがる。
「奥さんも裸になってくださいよ。あなたの美しい身体を眺めながらしゃぶってもらいたいですしね」
ギンギンに勃起して真っ直ぐに上を向いたペニスをシコりながら言う。
私は黙ってブラウスのボタンに手をかけた。
ブラジャーも外して、デニムのスカートも下ろした私は、興奮して凝視してくる先生の前で全裸になった。
「奥さん、お股のあたりがびしょびしょに濡れていますよ」
「──っ!」
事実を指摘されて焦ってしまう。
お股のあたりどころか、足首にまで愛液が垂れてしまっていたのだ。
いくら興奮しているとはいっても、普段なら絶対にありえない状態だった。
相当に恥ずかしい。
「興奮していらっしゃるんですね、奥さん」
私の戸惑いが分かるのだろうか、先生は的確に言葉を投げかけてくる。
「どうやら奥さんの弱点は本当に旦那さんのようですね。きっと彼への愛情が大きいからこそ、彼の知らないところで他の男に抱かれる、なんていう状況にここまで敏感に反応してしまうのですよ。別に浮気ぐらいどうってことはない──そんな風に思っている女性なら、こんなことにはならないでしょう」
褒められているのか何なのか。反応に困ってうつむく。
「ああ、そんな顔をしないでください。奥さんが旦那さんを愛していらっしゃるというのは、とても素晴らしいことではありませんか。私もそこまで愛される旦那さんが羨ましいですよ。それに、奥さんの弱点が分かると治療の方もずっとやりやすくなりますからね」
先生はそう言って、嬉しそうに笑う。
私を近くまで呼び寄せると、身体に触れてくる。
ふくらはぎ、太もも、腰周り、そして胸までを揉みまくって──やがて満足した彼は私の肩にぐっと手をかけた。
ベッドに座る彼の、その足の間にひざまずく格好。
目の前にペニスがそそり立っていた。
「さあ、お食べ」
「──っ」
まるでペット扱いだ。内心ムッとしてしまう。
が、寝室でフェラチオをするというのは約束したことでもあった。
私は仕方なく彼の言う通りにペニスを口に含む。
「んむっ……んんん……」
じゅるじゅると音を立てながら、全裸で口奉仕をする。
先生は前かがみになって、私の背中からお尻にかけてを撫でまわしてくる。
「あああ、奥さんの全裸フェラ最高ですよ。背中もお尻も真っ白で、本当に美しい。シミもホクロも一つもないじゃないですか。どうやったらこんなにもキメ細やかな肌になるんですか。本当に、この世のものとは思えないほどですよ」
「んむ……ぢゅるる……じゅば……じゅば……」
「あああ、たまりませんよ奥さん、気持ちいいですよ。あああ、最高の口と身体ですね。これは本当に素晴らしい。あああ」
「はむ……ちゅる……じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ」
そして先生がいいと言うまで、延々と股間に顔を埋め、肉棒を咥えさせられるのだった。
どれぐらい時間が経ったのか。おそらく三十分以上は経過していると思う。
その間も私はずっと全力でしゃぶり続けていた。なのに、彼はまだ射精しない。
ペニスは限界だというほどに勃起して、ヒクヒクと気持ちよさそうに痙攣しているのだが……。
そろそろイってくれないことには、こちらも口が限界に近かった。
今だって唾液垂れ流しの辛い状況なのに、これ以上続けていると本当にあごが外れてしまう。
私がそんな風に考えていたちょうどそのとき──彼のペニスが大きく跳ねた。
髪の毛を掴まれたかと思うと、そのまま強引に射精寸前のペニスから頭ごと引き剥がされる。
「あああ奥さん、もう限界です。入れましょう」
すべて言い終わらないうちに彼は立ち上がり、レイプ犯もかくやという勢いで私に抱きついてきた。
「えっ? ちょっ、せんせっ」
腕ごと上半身を抱きしめられ、下半身にはペニスをこすりつけられる。顔には荒い鼻息もかかっている。
「奥さん、もういいでしょう。お互いに我慢できないはずです。ここで挿入しましょう」
そう言って彼は私の身体をベッドに放り投げようと力を入れてくる。
「ちょっ、せんせっ、いやっ、やめてください。ここでは、しないって、約束だったじゃ、ないですかっ!」
私は全力で足を踏ん張って、なんとかベッドにだけは倒れてしまわないよう抵抗した。
「治療ですよ治療。奥さんに男性フェロモンを摂取してもらうという治療なのですから。場所はどこだって構わないでしょう」
「ちょ! せんせっ、なに言ってるんですか。ダメですってッ。落ち着いてください。出ましょ! とりあえずここを出ましょう!」
私は一瞬のすきを突いて彼の腕を振りほどき、ドアに向かって走る。
が、ドアノブに手をかけたところで、後ろからタックルをしてきた先生に再び腰周りに手を回された。
そして──。
「えっ──」
地面から足が浮いたかと思うと、次の瞬間には──私は背中からベッドに倒れ込んでいた。
──放り投げられた。
そう理解するのにも少し時間がかかって、その間にも彼はベッドに仰向けになる私の上に飛び掛ってくるのだった。
先生は私の腰骨にどっしりと体重をかけて座り、両の手首を掴んで頭の横で固定。
いわゆるマウントポジションという格好で、私はベッドに押さえつけられてしまった。
「……くっ……」
お互いに全裸なのだ。まずいことこの上ない。
「せ、先生、落ち着いてくださいっ。約束が違いますよっ。ここでは絶対にダメだって言ったじゃないですかっ!」
唾を飛ばして抗議する。
が、彼は目を血走らせて、私の顔に涎を垂らしてくるのだった。
「いえ、これも治療ですから。あなたには男性フェロモンが足りないんです。ちゃんと精液を子宮に注ぎこんであげないと、女性ホルモンが出せなくなっちゃうでしょう。いつまでも不妊が治りませんよ。治療にはこれが一番効くんですから。いい子にしてくださいよ。ね?」
「せんせっ、くっ……やめっ……!」
私がどれだけ必死でもがいても、男性の力の前にはまったくの無意味だった。
両腕はバンザイさせられたままピクリとも動かせない。足だけをベッドの上でバタつかせるのが精一杯である。
一方の先生は、女ひとり押さえつけるのは余裕といった表情だった。
現に彼は私を組み伏せたまま首筋に舌を這わせているし、私の股を狙って──下半身をずりずりと下に移動させていくのだ。
(ダメッ──このままじゃ……なし崩し的にハメられちゃう……)
先生の勃起ペニスは私の唾液をぬめらせながら、太もものあたりでドクドクと脈を打っている。彼が腰を動かすたび、少しずつ股の割れ目に近づいていく。
「──くっ……」
私のアソコも、長時間の全裸フェラでぬるぬるに濡れてしまっていた。
このままでは、彼がアソコにペニスを押し付けただけで、簡単に入ってしまう。
「せ、せんせっ!」
私はひたすら腕に、腰に、ありったけの力を入れて抵抗する。
絶対にこの場所で、夫婦の寝室で──夫以外の男性に抱かれるわけにはいかないのだ。
もしもこのベッドの上で抱かれるようなことがあれば……私は今後、彼にどうやって顔向けすればいいのか分からなくなる。
「んっく! んんんっ!」
しかし、いくら力を入れても無駄だった。
こっちは歯を食いしばって全力で抗っているのに、先生はニヤけながら私の身体を楽しんでいるのだ。
何分ぐらいそうしていただろう、徐々に私の体力も尽き始めていた。
(──下になってもがいているだけなのに、こんなにも体力を使うなんて……)
寝技をかけられて負ける柔道家の気持ちが痛いほどよく分かった。
私は今まさに、このまま「一本負け」しようとしているところだった──。