マスクは何でもよかった。簡単には脱げなくて、顔のパーツがある程度自由に動かせるもの。
ということで、プロレスラーが被るような頭にピッタリとフィットするタイプのマスクを選んだ。
これなら、目の周りも口の周りも自由に動かせる。
鼻が露出しているおかげで、柏木のカラダの匂いまでをも存分に堪能することができそうだった。
「よし……」
柏木家の風呂場は、雑木林に面している。山のような木々の間を下りれば、柏木家の建物裏に出るのだ。
風呂場はすぐそこだから、行くにしても帰るにしても最高の立地だった。草むらに荷物を隠しておくこともできる。もちろん人の目もまったく気にする必要がない。
俺は受信機を耳に当てたまま、太い木の根元にしゃがみこんで待機しているところだった。
マスクを被っただけで、後は全裸である。パンツも穿いていない。
柏木が風呂に入るという情報を得たら、すぐに窓を開けて侵入できるように気を張っている訳である。
蚊も群がってくるが、気にしない。手で払いのけつつ、その時が来るのをひたすらに待つ。
夜の九時になり、お母さんが「美里~、お風呂行って~」と大きな声で叫んだ。
「は~い」という可愛らしい声と、ドタドタと階段を降りているであろう柏木の足音までが聞こえてきた。
驚いたことに、盗聴器を介さず直接耳に入ってくる音の方が大きかった。
何だよ、盗聴器必要なかったじゃん! と心の中で文句を言いつつも、俺は急いで荷物を草むらに押し込み、裸一貫で木の陰から踊り出た。
半勃ちペニスをブラブラとさせつつ、開放的な気分のままで、すでに開錠しておいた窓を開けて風呂場の中へカラダを滑り込ませる。
後ろ手に窓を閉めて、驚かさないように自分の姿が彼女からよく見えるであろう位置に立った。
マスクの正面、額の部分には「妖怪カラダ洗い」の文字が刺繍されている。これを見れば、彼女も俺のことを変質者だとは思わないはずだった。
しかし、それも絶対ではない。声を出されそうになったらどうするか……。口を塞いで話を聞いてもらうことにしようか。
などと考えているあいだに、パチンと風呂場の電気が灯った。
自分の姿とともに、風呂場の隅々までもがくっきりと見えるようになる。
曇った透明なドアガラスの向こう側に、肌色がチラチラと見え隠れしていた。
背の高さや線の細さからして、大人のものではない。小学五年生の柏木美里が、ドア一枚隔てた向こう側で服を脱いで風呂に入る準備をしているのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ムクムクと亀頭をもたげてくる俺のイチモツ。
さすがに勃起した男性器は柏木を驚かせてしまう危険があった。左手でそっと股間を隠す。
そうしているうちに……ガチャリとドアが開いて、脱衣所から全裸の柏木が姿を現したのだった。
俺は右手で額の「妖怪カラダ洗い」の文字を指差して、彼女と目が合うその瞬間を待った。
[ 2011/12/31 10:01 ]
妖怪カラダ洗い |
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