「はぁはぁはぁはぁ……、んくっ……はぁはぁ……」
二人で呼吸を乱しながら、お互いの腕を激しく取り合う。
私が先生の手首を掴むと、彼も空いた手で私の手首を掴んでもぎ離す。
柔道の組み手争いのようなことを繰り返して、お互い自分に有利な体勢を築こうとする。
が、下になっている私の方が圧倒的に不利なのは間違いなく──。
先生が私の足を広げ、その間に身体を差し入れてきた。
股間と股間がぶつかり、こすれる。
ズボンの上からでも、すでに勃起しているのが分かった。
私はパンツも脱がされていたのだ。もし彼がズボンを履いていなかったら、この時点で挿入されていたかもしれない。
「……んくうっ……、はぁはぁ……」
視界の端には、テーブルに突っ伏して寝ている夫の姿が見えていた。
──今だけは、ここでだけは、絶対にヤラれる訳にはいかない。
私はこれ以上ないほどに必死になって抵抗する。
が、先生はそんな私の姿をも楽しんでいるような気がした。
「奥さん、大人しくしてくださいよ。どんなに抵抗しても、私があなたのことを逃がすはずがないでしょう。そんなことは、とっくに分かってもらえていると思っていましたが」
「はぁはぁ、はぁはぁ……」
私はなおも先生の腕を掴み、肩を押し上げながら睨み返す。
──分かってる。そんなことは分かってる。先生は一度やると言ったら、相手のことなんか気にせず最後まで自分のやりたいようにやるのだ。
でも、それでも──夫の寝ている横でハメられ、よがらされるなんて……そんなの絶対に許されることじゃない。
女としても、人妻としても、人間としても……絶対にあってはならないことなんだから。
「やめてくださいっ……、はぁはぁ……」
ブラジャーのホックが外れ、薄いブラウスのつなぎ目はビリビリと音を立てて破ける。
スカートは完全にたくし上げられて、腰周りをわずかに隠しているだけになってしまっていた。
半裸──それもほとんど裸に近い状態。
先生はそんな私を手で撫で回し、舌で舐め上げる。
乳房、わき腹、わきの下、そして首筋。
全力で暴れていたせいで、汗ばんだ私の身体。彼はむしろそれがいいんだと言わんばかりに必死になってむしゃぶりついてくる。
「……んや……あ……んふ……」
(……くっ……こんなの……嫌なはずなのに……)
そう思いながらも私は無理矢理感じさせられてしまっているのだった。
先生の蠢く指に、這い回る舌に、生臭い唾液に──嫌悪感を覚えれば覚えるほど、漂う淫靡さは増していく。
自然と、肌の感度まで上がってしまう。
「……んくあっ……」
乳首を甘噛みされて、思わず声が漏れる。
アソコから愛液がジュンと湧き出て、彼のズボンを濡らしてしまう。
「ふふ、奥さん、感じてますね。ほら、乳首もビンビンに勃起していますよ」
彼はそう言いながら、なおも私の乳首を執拗に責めてくる。
ベロベロと舌で舐めまわしたかと思うと、きゅうっと口を窄めて吸いついてくる。
「くふあっ……」
歯で軽く噛んだ後には、唾でぬるぬるになった先っぽを指でこねくりまわす。
「んはあぁ……ああん……」
徹底した乳首責め。
上半身にたまらない快感が満ちて、艶めかしく腰を動かしてしまう。
彼の股間と密着した部分が刺激されて、さらに愛液が溢れ出る。
先生のペニスが、ズボンとパンツ、布二枚を挟んだ先でしっかりと存在感を放っていた。
「あああ……んああ……」
両腕を掴まれてバンザイの格好。腰からわき腹、そしてわきの下までを一直線に舐め上げられた。
右も左も、何度も何度もしゃぶり尽くされる。
自分の腰がまるでペニスを求めているかのようにぐるりぐるりと動き始める。
頭ではいけないと分かっているのに、無理矢理送り込まれる興奮と快感にはどうしても抗えない。
純粋に力で押さえつけられるだけなら、まだ何とかなったかもしれないのに……。
「そうですね。女性は感じさせられたら、弱いですよね」
まるで頭の中を覗きこんだかのような先生の言葉。
私はとっさに顔を反らした。
そんな私の首筋、耳元に舌を這わせて彼は言う。
「ふふ、私の唾液にまみれた奥さんはいつ見ても可愛いですよ。これからもっとメチャクチャにして差し上げますから。罪悪感があって素直になれないというのなら……旦那さんがそこに座っているなんてことも忘れてしまうほどに感じさせてあげますから。安心してください」
先生は片手でズボンのボタンを外すと、私の身体に抱きついたまま足だけを動かしてそれを脱いでしまった。
鉄のようにカチコチになったペニスが現れ、さっそくこちらの内ももをえぐってくる。
「奥さんも準備はできているようですね。アソコがぬるぬるじゃないですか」
彼はペニスの先で入口をなぞり、私の目を見て下品な笑みを浮かべた。
ちゃくっ……と音を立てて怒張が膣口を押し広げてくる。
ぬるぬるのアソコは、抵抗することなく彼のペニスを受け入れてしまう。
亀頭が埋まり、全身に快感が駆け巡る。
が、私はその快感に呑まれることなく──思いっきり膝を折り曲げたのだった。
驚いてとっさには反応できない先生のその顔面に、両足の裏を叩きつける。
テーブルを背にして全力で突き出された私の両足は、大の男をも勢いよく吹き飛ばした。
先生はペニスに右手を添えたままの格好で、後ろに数歩よろけ──後頭部から壁に激突。そのまま床に崩れ落ちた。
けれど、意識を失うまでには至っていない。
それだけを確認した私は、素早くテーブルから下り、床に手をつきながら必死になって走り出す。
リビングのドアを抜けて玄関への廊下に転がり出る。
半裸のまま一直線に玄関ドアに飛びついて、ノブを回す。
ガチャガチャ。
が、回らなかった。鍵がかかっている。
焦りながら鍵を開けようと右手を差し出し──、
後ろからものすごい勢いで体当たりされた。
左手で髪の毛を掴まれ、右手で鍵を開けようとしていた手を封じられる。
玄関の冷たいドアに顔と胸を押し付けられて、いまだにスカートのめくれあがった生のお尻にペニスを押し当てられる。
「奥さん、どうして逃げるんですか」
耳元で熱い息を吐きながら、先生が言う。
私は彼とドアの間で押し潰されながら、唸るように声を搾った。
「い……嫌だって言ってるじゃないですか……」
先生は片手で私を拘束したまま、開錠されていないかノブを回して確認。
開かないドアに満足すると、両手で私の上半身を腕ごと抱き、締め上げてくる。
「ふぐっ……」
「嫌でも何でも、治療なんだから仕方ないでしょう。妊娠したいとおっしゃったのは奥さん自身じゃありませんか。ほら、言うことを聞いてください。そうすれば絶対に妊娠させてあげますから」
先生がゆっくりと体重をかけてくる。
私は抱きかかえられたまま床に押し倒される。
「い……やだっ……助けてっ……、──アナタッ!」
無我夢中でその一言を発してしまう。
先生は笑った。
「ふふ、奥さんも残酷ですね。ぐっすりお休み中の旦那さんに助けを求めるなんて。そんなことをしたら旦那さんが可哀相じゃないですか。自分の妻が襲われて助けを求めているのに、その間ずっと眠り続けていたなんて……彼が事実を知れば死にたくなりますよ」
「んくっ……」
「しかし奥さんもどうしてあんな男と結婚したんですか? 自分の女が犯されようとしているのに寝ているだなんて……私には考えられませんよ。情けない男じゃないですか。奥さんには似合いません」
「……、黙ってください……」
「おや、どうしました? 旦那さんのことを悪く言われて怒ってしまいましたか? でもね奥さん、やっぱりあなたに彼は相応しくない。あなたは……そうですね、例えば──夫がいるにも関わらず家に上がり込み、奥さんにチンポをぶち込んでヒィヒィよがらせる──そんな男らしい相手の方がいいんじゃないですかね」
「──っ、何をっ……」
「ふふ、例えばの話ですよ、例えばの。そんなにムキにならないでください──でも……そうですね、そこまで旦那さんの前でやられるのが嫌だというなら、これはもう本当に彼の前であなたに中出しする以外になくなりましたね」
「──っ」
「もうここでもいいかと思ってたんですけどね。やっぱり戻りましょう。あのテーブルの上で──旦那さんの眠るすぐ横で……前から後ろから何発も射精して差し上げます」
「んくっ……」
私の首に、先生の手がかかった。
何をするのかと思えば、彼はそのまま強く首を締めてきた。
「……あ……か……」
息ができない。
頭がパンクしそうなほどの窒息感に見舞われ、急速に視界がぼやけていく。
「……が……か……」
ダメだ、意識が飛んでしまう──そう思った次の瞬間には、もう私は何一つ考えることができなくなっていた。