先生に抱きかかえられるようにして、部屋への廊下を歩く。
ぐったりと彼に体重を預け、フラフラしながらも何とか足だけは動かしていく。
浴衣に腕を通しただけの、腰紐すら結んでいない格好のままで。
頭も身体も、輪姦されている時よりはずっと落ち着いていた。
普通に考えられるし、普通に喋れる……と思う。
膝はまだガクガクして自分の足では歩くこともできないが、少なくとも自我を失うほどの快楽は抜けてきているように思えた。
まぁ身体全体としては、まだまだ火照りも冷めず、興奮状態にあるといってもいいぐらいではあるが。
多人数レイプが終わって、おそらく一時間ほどは経過しているはずなのだが……。私は今ごろになってようやく、「ああ、終わったんだな」と思うことができているのだった。
ところどころ記憶の欠落があるものの、最後はみんなに身体を洗ってもらっていたことを覚えている。
何しろものすごく長い間、隅から隅まで徹底的に洗われてしまったのだから。
身体中にこびりついた精液を落とすのは、彼らにしても容易ではなかったはずだ。
「奥さん、大丈夫ですか。ほら、部屋に着きましたよ」
声をかけられて顔を上げると、目の前にはもう自分たちの部屋があった。
先生に運ばれるがままに、中へと足を踏み入れる。
部屋にはすでに布団が用意されていた。畳の上に布団が二つ、ぴったりと隙間なく並べられている。
それを見ただけで、私は先生と本当の夫婦になってしまったかのような感覚に襲われるのだった。
ほんの一瞬だけ脳裏に夫の姿が浮かんだが、疲れには勝てなかった。
一刻も早く楽になりたくて、私は愛する彼が家で留守番をしていることも忘れてそのまま布団に倒れ込んだ。
「……あん……んふぅ……」
呻き声を上げて、仰向けに寝返りを打つ。
まるで酔いつぶれた女そのものだ。
結んでいない浴衣の前がはだけ、下着もつけていない身体はそのほとんどが露になった。
お風呂上りの薄ピンクの肌は、自分でも分かるほどに女の色香を漂わせている。
が、そんなこともどうだってよかった。
あまりにも布団が気持ちよすぎて、ようやく安息の場所にたどり着けた気がして、私は首から下を無防備にさらけ出したままゆっくりと目を閉じた。
先生はそんな私に近づき、覆いかぶさっては、そっと素肌に触れてくるのだった。
「……ん……」
水を吸って普段よりハリもツヤもある乳房を、両手でむにゅむにゅと揉み込まれる。
わき腹の辺りをやさしく撫でられ、ウエストのくびれから太ももの付け根までを丹念にマッサージされる。
片手で肩を掴まれたかと思うと、そのまま唇が触れるかどうかという絶妙なキスをされてしまった。
たったそれだけのことで、一度は収まりかけていた性的興奮が再び頭をもたげてくるのを感じた。
先生がスンスンと鼻を鳴らして洗いたての私の身体、その匂いを嗅いできた。胸の谷間の辺り、おへその辺り、そして股間の辺りまで──。
もう浴衣は服としての機能を果たしていない。ただ自分の背中に広がるだけの布と化している。
足先の方まで身体をずらして人妻の女体を眺め、匂いを嗅ぎ、軽いキスを撒いていた先生。彼は満足したのか、また下から上へと私の肌に舌を当てながら移動してくるのだった。
「あん……」
乳首をつままれてクリクリと転がされると、それだけで声が漏れてしまう。
やはりあれだけの性体験をしてしまうと、そう簡単に普段の自分へと戻ることはできないらしい。
私は大好きな恋人の前で甘えるかのように、悩ましく身体をくねらせ、熱い吐息を漏らして、もう一度「女」へと変わっていく。
「んやあっ……はぁッ……せんせぇ……」
私は先生に密着されて、身体中を撫でられ、舐められていた。
彼の浴衣も私のと同様、ほとんどその役目を果たしていない。マントのように背中を隠しただけの状態。
だから結局、彼の勃起した男性器は丸出しで──。
先からいやらしい体液を分泌させたそれは、本人が動くたびにナメクジのように私の身体を這い回ってくるのだった。
性器の先が触れた部分は、残らず汁でベトベトにされた。ガマン汁だとは思えないぐらいの粘っこさ。
あまりにもドロドロとしていて、少し奇異な感じ。男性の身体のことはよく分からないが、もしかしたらこれは精液なのではないかと思う。先生は、今も射精している最中なのではないか……。
そう思って見れば、なるほど彼のペニスはドクドクと痙攣していたし、私の身体を包む粘液の匂いも、まさに子種のそれだった。
先生が、興奮している。前戯の最中に、我慢もできず射精してしまうほどに──。
その事実はなぜか私の中で温かく広がり、心を満たすのだった。
夫以外の男性に身体を触られ、舐められ、なおかつその最中にびゅるびゅると射精され、挙句の果てに吐き出した粘液を細胞になすりつけられているというのに……。
私は一体いつから、こんなことで幸せを感じる女になってしまったのだろうと思う。
そしてもっとまずいことに──そんな自分を自覚しても、自己嫌悪の気持ちすら湧いてこないのだ。
本当に、私は変わってしまった。いや、変えられてしまった。この変態中年男性の手によって。
「ふっくぁ……」
はしたなく身をよじって先生の愛撫に反応する。布団の上で左右に大きく腰を揺らし、生の足をぐにぐにと曲げ伸ばしては身悶える。
顔を赤らめ、わざと自分からよだれを垂らし、彼のテクニックに反応する。
その姿は明らかに、好きな男に抱かれて喜んでいる女のそれ。
先ほどまであれだけの人数に囲まれていたからか……部屋で二人きりなんだと思えば、そんな姿を晒すことも苦にはならないのだった。
むしろ、先生の前で“女”でいることができて嬉しい。自分の肉体で、先生が興奮してくれているのが最高に誇らしい。
彼が興奮して気持ちよくなってくれるのなら、私はいくらでもこの身を捧げ、どんな恥ずかしいことだってしてあげられると思った。
「んっ……はああっ……」
彼が顔を近づけて、至近距離から私の目を見つめてくる。
私も彼の瞳を見つめ返し、視線を絡ませ目だけで会話をする。
するとどうしてだか心が高ぶって、大量の涙が溢れてきてしまうのだった。
「む……んふぅ……」
先生はそんな私に優しくキスをしてくれた。
二人の唇が重なり、お互いに舌を伸ばして唾液を交換していく。
「んふぅ……んふ……、むふ……んちゅ……、ぢゅる……」
舌と舌とを複雑に絡め、粘膜をこすり、すすり合う。
甘い蜜に飢えた動物のように、私は必死になって彼の口に吸い付いた。
じゅわじゅわと口内に男性の味が染み込んでくると、身体が震えるほどに気持ちが良くなった。
ごくりと彼の唾を飲むと、何だか先生と一つになれた気までした。
そしてそのまま長い時間──アソコからはだらだらと愛液を垂れ流し続け、私は彼とのキスを楽しんだ。心の底から。
もうキスだけでイッてしまいそうだった。
いや、本当に私は、心では何度もイッていたのだと思う。理性を留める頭のネジが何本か飛んでしまった──そう思えるほどの快感に身を任せて、精神を天に昇らせていたのだ。